2011年3月11日、日本を襲った東日本大震災。
当時、大宮道場でテコンドーの修練をしていた稽古生の長田涼平(当時2級赤帯)さんも福島県にある実家が被災し、テコンドーの稽古はもちろん、普段の生活を送ることすらままならない過酷な状況に陥りました。
その後、社会人として都内で就職するも多忙のため、一時テコンドーを離れることになりました。
しかし、そのような震災や多忙な生活を乗り越えてテコンドーに復帰し、13年掛けて黒帯を取得した長田1段のSTORYをご紹介します。

震災で辛いときに支えてくれた師範や道場生の方々を本当の家族のように思っています。

テコンドーを始めたきっかけ

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長田1段がテコンドーを始めたキッカケを教えてください。
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長田1段
幼馴染みに勧められて始めました。
自宅から近かった当時の大宮本部道場に体験練習に行き、テコンドーの技や朴師賢の人柄に感銘を受けすぐに入会を決めました。

また、初めての稽古では華麗な足技に魅了され、自分もあんな風に蹴れるようになりたいと思いました。
その他にも朴師賢や先輩方にフレンドリーに接していただき初めて伺ったことを忘れてしまうくらい馴染みました。
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朴武館の道場では師範はじめ、稽古生皆が新しく入会された方にフレンドリーに接する事が特長の一つですよね。
演武で華麗な跳び蹴りを披露する長田1段

震災の苦難を乗り越えて

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色帯時代に一番印象に残っていることは何ですか?
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長田1段
試合や審査、稽古、遠征など思い出は沢山ありますが、一番は2011年東日本大震災で福島県にある実家が被災し(私も帰省しておりました)、甚大な被害だったのですが道場の皆様から温かい声援、募金活動による義援金をいただいたり、食料や水の物資などをいただき本当の家族のように助けてもらった事が今でも印象に残っています。

また、被災後すぐに朴師賢や土屋師範から安否確認の御連絡もいただき精神的にも助けていただきました。
道場生から支援物資が送られる
義援金を手渡す朴禎賢師賢と大島勝師範
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震災の時は本当に大変な思いをされたと思います。
そのような厳しい状況でもテコンドーファミリーを通じた支援が長田1段の支えになった事はとても意義深いものだと思います。

震災の後、すぐに稽古に復帰するのは難しかったと思いますがどのような困難がありましたか?
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長田1段
帰省中に被災し、福島の家族のことが心配だったので、関東に中々戻れず数ヶ月間は、稽古は勿論ですが生活が安定するまでに非常に時間がかかりました。

しかし、以前朴師賢からいただいた「天と地があればテコンドーの修練は出来る」という言葉を励みに被災地でもトゥルの修練などに励み辛い時間を乗り越えました。
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辛い状況でもテコンドーの稽古に励む長田1段の姿勢は多くの稽古生に勇気を与える事だと思います。

その後、落ち着いて稽古に復帰出来た時はどのような心境でしたか?
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長田1段
震災後に稽古復帰した際には、自分の置かれている環境、師範方や仲間にとても恵まれている事を再認識し、月並みではありますが本当に感謝の気持ちでいっぱいになりました。
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一度辛い状況を経験すると日常のありがたさについて再確認出来ますよね。

一度、離れたテコンドー

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さて、社会人になり、一度テコンドーを離れた時の理由と心境を教えてください。
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長田1段
社会人になり、仕事の関係で道場への練習が中々参加出来ずに離れる形となりました。

期間にすると6年程になりますが、その間もテコンドーの事は忘れた事はなかったですし、何より朝霞道場の土屋師範がずっと私を気に掛けて連絡をくださっていた事が嬉しかったです。

ご自身も仕事や指導で忙しい中、道場に通えていない稽古生まで気に掛けてくださることは大変な事だと思います。
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多忙な中でこそ土屋師範をはじめとしたテコンドーファミリーの存在は大きいものとなりますよね。

その後、テコンドーに復帰しようと思ったキッカケを教えてください。
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長田1段
テコンドーが好きという一言に尽きます。
テコンドーの技術体系や精神性は勿論ですが、朴武館に入門し正統テコンドーに触れ、生涯武道としての素晴らしさや沢山の良き先生や仲間と出会ったので離れていた間も絶対に復帰したいと日々感じていました。
そんな折に、良いタイミングで転職も出来たので復帰しました。
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実際に復帰してテコンドーを始めた時の気持ちを教えてください。
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長田1段
朴師賢や土屋師範、道場の皆様に温かく復帰を迎えていただきとても嬉しかったです。
当時20歳で始めた時の印象と社会人になり復帰した印象が全然違う事も新鮮でした。
また、改めてテコンドーの奥深さや技に楽しさを感じました。
入門当初から師事している土屋稔師範
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なるほど。
社会人で復帰した際の印象が違うというのは具体的にどのように違いましたか?
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長田1段
社会人になると仕事をしながら限られた時間の中でテコンドーの修練をすることになります。
自分の生活の中でテコンドーに対する向き合い方や時間の使い方が変わり、以前に増してテコンドーの楽しさや生涯武道としての尊さを感じるようになりました。

また、学生時代にテコンドーを学ぶ事と、社会人となり、テコンドーを学ぶ事は、全く意味が違ってくるという事を感じました。
それは、学生時代の稽古は、「技の修得」が主な目的となっていましたが、社会人となっての稽古は、稽古を通じて「人間力を養う」そして指導者や周りの人に対し「感謝の心」が感じる事ができました。
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社会人になり限られた時間で修練するからこそ感じるものもありますよね。

黒帯取得

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復帰後に黒帯を取得されましたが、その時の様子をお聞かせください
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長田1段
復帰から約一年後に昇段しましたが、山あり谷ありで。
周りの皆様に本当に沢山の応援やバックアップをいただきながら黒帯を取得できました。
嬉しい気持ちはありますが、帯にふさわしい人間にならなければという身の引き締まる思いになりました。
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入門から13年、様々な困難を乗り越えて取得した黒帯はとても価値のあるものだと思います。
朝霞道場 土屋師範と。 長田1段は朝霞道場有段者第1号となる。
朴武館指導者たちと

これからの目標

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それでは最後にこれからのテコンドーの目標を教えてください。
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長田1段
正しい技術をしっかりと習得すること、全日本大会に出場する事を今は目標に練習に励んでいます。
そして、朴師賢や先輩方から正統テコンドーの技術や精神を自分が教わってきたように、人を育てる指導者になれるように頑張っていきたいです。

最後に

社会人になり仕事との両立が難しくなったり、震災やコロナウイルスのような災害によって継続できなくなったりとテコンドーを続けるうえでは様々な困難があります。

しかし、長田1段のように様々な困難を乗り越えてテコンドーの修練を継続することで人間的な成長はもちろん、テコンドーファミリーとしての居場所を確立することが出来ます。

デジタル時代で人と人との繋がりが希薄になる現代において、このような直接のつながりがあるテコンドーファミリーは多くの人にとっての居場所となり困難な状況を共に乗り越える大きな力となります。

ぜひ、皆さまもテコンドーを始めてテコンドーファミリーの一員になってみませんか?