こんにちは!せきぐちです。今回のコラムではテコンドーに活きる下半身の筋トレ。特に股関節周りについて解説します。

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股関節、使えてますか

他のスポーツにおいても体幹同様に股関節の重要性が提唱されることも多くなってきました。
しかし、具体的になぜ重要でそれがどう競技に役立つかと問われるとなかなか答えに詰まる方も多いのではないでしょうか。今回はそのあたりをご紹介していきましょう。

忘れないうちに先に言わせて頂きますと、強い力の出しやすさと怪我のリスクが全く違うのです。太字にするくらい違います。

しゃがむ動作の比較です。
膝が出てしゃがむパターンと、膝を出さず股関節を折り込むようにしてしゃがむパターン。
実際にやってみるとよーくお分かり頂けるかと思いますが、膝が出るパターンは股関節より膝を伸ばす働きのある腿前の筋肉がメインで行われています。

一方、膝を出さないパターンは膝を伸ばす働きは少なく、大腿裏やお尻の筋肉がメインで行われています。

ということでこの動作の差は、しゃがむに関連する動作(立ち上がり、床を強く蹴る、ジャンプからの着地など)において股関節周りの筋肉を使うか、膝周りの筋肉を使うかという違いになります。膝と股関節、強い力が出せるのは股関節なのです。
これがスポーツにおいて股関節を使って動くことが重要といわれる所以です。

テコンドーは上体がほぼ垂直な状態でのステップやジャンプが主となるため、先の働きを踏まえた上でも股関節に加えて腿前の筋力も大事になってきます。テコンドーでは片足での動作やサイドステップや横蹴り(ヨプチャチルギ)、急な踏み込みなどで股関節周辺の筋肉を特に重点的に使います。

わりとためになるので読んで頂きたいスーパー余談

余談ですが、お尻の筋肉である大殿筋は高い力を出すことに向いていて、一方で腿裏のハムストリングスや腿前の大腿四頭筋は速い力発揮と、力発揮をする方向を調整することに特化しているという研究報告があります。

さらに、ハムと大腿四頭筋は関節の角度、もとい筋肉がどれだけ伸ばされたかを非常に繊細かつ敏感に察知するセンサー(筋紡錘というものですぞ)が多く備わっているといわれています。
腿前とか腿裏をストレッチすると明らかに他の部分と違った突っ張った痛みを感じるのは、速度や長さの変化を近くするためのセンサーが多いから敏感に感知するため、という見解も有力説。

要はストレッチをしてイテテとなるのは硬いとか柔らかいはさておき、正常にセンサーが反応してくれているということです。
センサーさん、今日もありがとうございます!

怪我の予防の観点から

さっきと同じ動画です。
先に述べたのは力発揮の話で、怪我の予防の観点からも股関節の強化は非常に重要です。
上の動画を、ジャンプの着地の瞬間とすると、膝が出る着地と膝が出ない着地に分かれます。

膝が出る着地は膝周辺がメインで衝撃を吸収するのに対し、膝がでない着地は強い筋力が発揮できる股関節がメインで衝撃を吸収できます。

さらに特筆すべきは、膝の位置に伴うスネの骨の角度です。
膝が前に出るほどスネも前に傾きます。
垂直の着地動作だとすると、上からの負荷に対してスネの骨が斜めに体重+αを支えることになるので力学的に非常に非効率で、膝関節への負荷も高まります。

一方、膝が前に出なければスネの骨も前に傾きません。
垂直の着地動作だとすると、上からの負荷に対してスネの骨が垂直に体重+αを支えることになるので力学的に非常に効率的で、膝関節への負荷は減少します。

股関節のトレーニング

ここまでしっかりと読み進めてくださった研究熱心なあなたはもう股関節博士。
以下、だんだん強度が増していきます。

ヒップリフト

そこまでの強度はなく、皆様結構な回数できるかと思います。ここではお尻を意識するためのアップとして導入をお勧めします。地面を押す方の踵が体から離れすぎると腿裏に入ってしまうのでうまくお尻、大臀筋を意識しましょ。

片足のヒップリフト

片足になると途端に負荷が増します。こちらも踵と体の離れすぎに注意。

グッドモーニング

股関節に置いた手を挟み込むようにします。大して辛くない種目ですが、アップや股関節を使う感覚を覚えるのにお勧めです。背骨が丸まらないようにお辞儀をしていき、腿裏がストレッチされる感覚があればOK。後頭部〜腰に棒を置いてやるパターンもありです。

フラミンゴ

膝くらいの高さのものに触れて起きます。グッドモーニングの動きの応用版です。右足で立ったら左手で触るというように、手と足は対になります。背中~後ろ足を意識して水飲み鳥みたく頭~後ろ足までを一直線に保ち、片足でも骨盤が左右に傾かず、正面を向いたまま動作を行います。本当にグッドモーニングの片足版です。動画ではペットボトルを置いていますが、触ることに気を取られると手を近づけようとして背中が丸まるのでご注意を。立ってる側も蹴り上げてる側も鍛えられる便利エクササイズ。

ダンベル持ってフラミンゴ

上の種目に負荷をかけます。ダンベルの重さで背中が引かれたり骨盤が傾いたりぐらぐらしたりしないように。直立時に、立ってる側のお尻をぎゅっと収縮させることができたあなたは素敵です。

どの種目も、通常の筋トレに比べたらそこまで辛いものではありません。適当にやろうと思えば適当にそれっぽくできます。
ここで重要なのは、股関節を使って楽に動くことを習得することです。

そんなに大事な機能なのになぜ訓練なしに簡単に使えないのかという話

怪我の予防、そして力発揮の観点から股関節の重要性がとくとお判り頂けたかと思います。

しかし人間、エネルギーを消費しない様にするため、通常はエコモードになっているので股関節を優先して使う機能はついていないのです。

先にも述べた様に、股関節は他の関節に比べて大きな力を出せる反面、大きなエネルギーを必要とするのです。上半身と下半身を繋ぐか、太腿とスネを繋ぐかで考えると改めてその規模の違いがお判り頂けるかと思います。

人間、エコモード。そのためにはなるべく小さい動きや小さい関節を優先してしまいますがスポーツにおいては時として瞬間的に高い力を出す事が大事になってきます。そこで素早くエコモードから動くモードに切り替えるためにも、わざと大きな筋肉を優先して使うことも非常に重要なのです。

せきぐち