ゴーンデンエイジとは

小学校高学年程までの成長期の子において、特に運動能力の習得や向上に焦点を置いたものはゴールデンエイジと呼ばれています。

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幼少期の運動経験が後々に至るまで大きな影響を与えるということで耳にしたことがある方も多いのではないでしょうか。

今回はそういった幼少期や若年期の運動経験が後々に与える影響に関してのコラムになります。

このゴールデンエイジ理論は1928年に米国の大学にて生物学の教授でもあった医学者が発表した「スキャモンの発達曲線」のグラフに基づいて提唱されたものです。

骨格や内分泌系などの各器官が、年齢と共にどう発達していくかが示されたそのグラフは発表から100年近く経過する昨今でも医療関連の教科書などにも記載されることがあり、幼少期の成長の話の鉄板となっています。

そのグラフにおいて、身体を動かすための運動神経系を意味する「神経系」の発達は生後から急激に発達して4,5歳頃には80%まで発達し、12歳頃には100%発達をすると記されているため、

その時期を運動の発達に特に重要な時期であると位置づけたことからゴールデンエイジと呼び、現在に至っています。

それから解析機器や研究環境の発展等から研究が進んだ結果、近年ではこのゴールデンエイジ理論において新たな観点からの見解が出てきました。

その内容は、「スキャモンの発達曲線における神経系の発達は身体の成長に伴う物量的な増加を示しており、神経の質と必ずしもリンクしていないのではないか」というものです。

なかなか難しく聞こえますが、少々掘り下げてこの見解について理解を深めていきましょう。

神経の量が増える事より、その増えた神経を使いこなすことが大事

脳から背骨の中を通る神経は枝分かれして筋肉へと向かい、その筋肉にのみ脳からの指令を伝達します。

その体全体における広い意味での神経の発達を「物量的な増加」と捉えることができます。

言い換えると、12歳頃をピークに神経系も成長や発達をしますが、その性能や質は言及されていないということです。

そして「神経の質」とはその全体や、微細な先端部分の筋線維とのつながりの部分も含むものと考えられます。

この神経の質とは、脳から筋肉までの指令が伝達されるまでの時間や、自分が思った通りの動きができるか等の速さや正確さに大きく関わるものです。

いずれも一概には分かりにくいため、一例として「視覚~運動」と「神経~筋」に大別した二つの項目に分けて見ていきましょう。

視覚~運動

身体動作的な運動だけでなく、感覚の伝達ももちろん神経の伝達により行われています。

視覚からの情報に基づき、動いたものに対して判断をして行動を起こす一連の動作も神経伝達の連続による結果です。

神経系には繰り返し行った動作に関してより早く処理を行うために自動化をし、より一連の動作を早く行うための学習機能が付いています。

この自動化や学習機能を「神経の質」と考えることができます。

小難しく思えますが、反復練習でフォームが習得できることやできなかった動きを繰り返して練習するによりできるようになることがこれに該当します。

「手がこうで、足がこうで・・・」と意識しなくてもできるようになるという素晴らしい学習機能までついているため、歩く、走る、自転車に乗るなどの日常生活動作においてもその成果が発揮されています。

神経~筋

神経の筋肉の末端である接合部を見ていきましょう。
まず、筋肉は細い筋線維の集まりでできています。

その中の10本の筋線維に対して5本しか神経が接続されていなかった場合には半分の力しか出せず動き自体にも大きく反映されてしまうため、このことも筋や神経の質と考えられます。

ちなみに神経の末端部の枝分かれは体の各部分により大きく異なっています。

運動神経において大腿前部の筋肉等はまとめて動いて力を発揮することが重視されるために神経の先端部の枝分かれ自体は少なくなっており、顔や指先の筋肉などは繊細かつ複雑な動きが重視されるために神経の枝分かれがより細かくなっています。

これらの枝分かれは繰り返し運動を行うことで退化も進化もすることがわかっています。
使わなければその機能は衰えて鈍くなり、意図的に使っていけばより進化して繊細な動作が可能になります

このように「神経を鍛える」観点を持ちつつ運動や動作を考えると広い視点からの見解が得られやすくなるように思います。

今回は動きの発達に関してのみになりますが、これに限らず全体を見渡す広い視野と限局的に注視できる視点を使い分けられると非常に素晴らしく思います。

早期専門化と早期多様化

ゴールデンエイジ理論と合わせて語られることが多いのが「早期専門化と早期多様化」です。

先程は神経系の発達に焦点を合わせていましたが、もちろん運動はその部分のみに限ったものではありませんので、競技種目やその特性などを含め視野を広げて多角的に捉えていきましょう。

それぞれのメリット、デメリット

幼少期から一つの競技や種目だけを専門的に特化して習得を進めることを早期専門化と呼び、

それに対して一つの競技や種目に特化せず複数の種目を経験していく事を早期多様化と呼びます。

早期専門化


一見すると、より早い段階から一つの競技に特化した早期専門化のほうが競技に触れる時間も長く結果的に好成績を収めることが出来そうに思えますが、

幼年期からの特定動作の反復や酷使により慢性的な障害や発達の偏りが起きることもあります。

特に幼年期、若年期においては本人の意向や状況を尊重し、随時相談しつつ進めていく事も大切です。

特別な例として、特異な柔軟性や卓越したバランス能力を要求される体操競技等においては競技の身体能力の特性から幼少期に特化しておく必要があります。

また、競技における「技術」は群を抜く反面、競技動作に通常は含まれていない動作や競技の転向後の適応が難しいのではとの見解があり、もちろんすべての早期専門化において同様とは決して言えませんが、

あくまでメリットとデメリットのどちらも含むという事を知っておく必要があります。

早期多様化

対して、一つの競技種目に特化せずに複数の種目を経験させる早期多様化においては、特定競技において早期専門化ほどの高い「技術」には及ばずとも、複数種目を行うことで特定の動作による関節の酷使や慢性的な疲労の度合いは少なく、比較的障害には繋がりにくくなります。

また、幼少期や若年期において本人の楽しそうなのでやってみたいという希望に応じやすいために本人の意向に随時沿うことが可能です。

しかし、ただ単に多くの種目を経験するだけではその意義は浅く、あくまで実施種目の特性を理解して自ら向上心を持ち、その競技の恩恵を受けつつ習得に励み、多種目を同時並行で進めていくバランスの良さが重要になります。

本人にとって多くを経験することで他の競技と比較出来たり飽きを感じにくいという面もあります。
多種目とはいえそれぞれはあくまで運動の学習や向上に努めるものですので、

決して単に多くの種目を経験することではその本質を捉えられず、ただの身体を使った遊びになってしまうため、複数種目それぞれにおいて自身で向上を目指してこそ、その真価が発揮されます

どちらも未来に活きる


現在、様々な競技でオリンピックや世界大会で好成績を収めているアスリートにも様々な経歴があり、早期専門化と早期多様化のどちらを歩んできた選手も結果として同様に活躍しています。

単一競技に特化したエリート教育を受けて現在もその競技で好成績を収めるテニス選手もいれば、中学校までは体操競技に励み、その後重量挙げに転向して才能を開花させ世界大会で好成績を収める女子選手もいます。

幼少期や若年期は楽しみつつもしっかりと運動を行い、分野や特性に関わらず得意、不得意と向き合う事が自己成長や運動能力の向上につながる第一歩になります。

なかなか難しくなってしまいましたが前述の理論背景から、まずはどんな種目でも、酸いも甘いも含めて楽しくやってみる事と言えます。その中で本稿で記載をしましたどの観点からも、それらの選択肢にテコンドーを取り入れてみることを強くお勧め致します。

一見しただけでも各道場の練習風景はとても楽しそうに思えることでしょうし、動ける服装さえあれば一緒に体験をしてみることも随時歓迎しています。一人でも、お友達とももちろん、ご家族でも非常に楽しく体験が可能です。

せきぐち